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農地の賃貸借契約書を作成する時の注意点

賃貸借契約書民法上、契約は口約束でも成立するとされています。しかし、農地の売買や貸し借りの契約については農地法の制約があって取扱いが異なっています。

農地法3条7項は、「許可を受けないでした行為は、その効果を生じない。」と規定しています。これは、農地を賃貸する場合、当事者で契約を締結するだけでは足りず、農地法3条許可が必要となることを意味しています。

そして、当事者の賃貸借契約について、当事者は書面により契約の内容を明らかにしなければならないとされています。

農地法21条

  • 農地又は採草放牧地の賃貸借契約については、当事者は、書面によりその存続期間、借賃等の額及び支払条件その他その契約並びにこれに付随する契約の内容を明らかにしなければならない。

今回は、農地の賃貸借契約を締結する際に、どのようなことに注意して契約書を作成するべきかを検討してみたいと思います。

賃貸借契約書の留意点

農地の賃貸借契約については、農林水産省から公表されている要領通知を参考として契約書を作成するとされています。

要領通知によると、農地の賃貸借契約は以下のことに留意して作成する必要があります。

  1. 契約の当事者
  2. 契約期間
  3. 転貸
  4. 転貸物の目的物の修繕及び改良
  5. 賃貸借の目的物の経営費用
  6. 賃貸借契約等の終了の際の立毛補償
  7. 解除条件
  8. 違約金等

それでは個別に見ていきましょう。

1.契約の当事者

契約の当事者が、民法20条に規定する制限行為能力者である場合には、次に事項に留意する必要があります。

  1. 未成年者が契約をなす場合は、法定代理人( 親権者、指定後見人、選任後見人)の同意又は代理の有無
  2. 成年被後見人が契約をなす場合は、成年後見人の代理の有無
  3. 被保佐人が5年を超える契約をなす場合は、保佐人の同意の有無
  4. 後見人が被後見人に代ってその存続期間が5年を超える契約を締結し又は未成年者がその契約をすることにつき後見人が同意する場合において後見監督人があるときは、後見監督人の同意の有無
  5. 民法第17条第1 項の審判を受けた被補助人が5 年を超える契約をなす場合は、補助人の同意又は補助人の同意に代わる家庭裁判所の許可の有無

契約の相手が精神上の障害をもっていて、知らずに契約を締結してしまうと、突然契約が取り消されたりして、予想外の損害を受ける可能性がありますので注意が必要です。

なお、精神上の障害がある者と契約をする場合には、法律上どの制限行為能力者に該当していて、本人で有効な契約ができるのかどうか、できないのであれば誰が代理で契約を締結できるのかなど、慎重に対応する必要があります。

聞き慣れないであろう法律用語の解説を以下に示しておきます。

制限行為能力者

単独で有効に法律行為をすることができる能力が制限される者のことです。ここでは、単独で契約を結ぶことができない者と解釈してください。

制限行為能力者は民法によって、成年被後見人・被保佐人・被補助人の3種類が規定されています。

制限行為能力者が行った一定の行為は、取り消すことができます。

成年後見人

精神上の障害により、正常な判断能力を欠く状況にある者に代わって、契約などの法律行為を行うために家庭裁判所から指定された者のことで、成年被後見人とは、成年後見人のサポートを受けている制限行為能力者のことです。

保佐人

精神上の障害により、正常な判断能力が著しく不十分である者に代わって、契約などの法律行為を行ったり、同意を与えるために家庭裁判所から指定された者のことで、被保佐人とは、保佐人のサポートを受けている制限行為能力者のことです。

補助人

精神上の障害により、至上な判断能力が不十分である者に代わって、契約などの法律行為を行ったり、同意を与えるために家庭裁判所から指定された者のことで、被補助人とは、補助人のサポートを受けている制限行為能力者のことです。

後見監督人

後見人を監督する者。後見人は、本人に代わって契約などを独自の判断ですることができますので、後見人が本人の不利益にるような行為をしないように後見人を監督します。

2.契約期間

契約期間については、少なくとも10年以上とするのが適当とされています。

  • 契約期間については、果樹その他永年作物を栽培しているものは、その果樹の効用年数を考慮して定める必要があるが、少なくとも10年以上とするのが適当であることに留意する必要がある。

借主が長期的に農地を借り受け、安定的に農業を営むことが期待されています。

転貸

農地の転貸については、以下のことに注意してください。

  • 農地等につき所有権以外の権原に基づいて耕作又は養畜の事業が行われている土地の転貸は、中間地主の発生等種々の弊害があるので農地法上認められた場合でかつ真にやむを得ない場合以外は認めないよう留意する必要がある。もし転貸を認める場合は、制限事項を記載すること。

農地の転貸(又貸し)は、中間地主を生み出してしまう懸念があるため、原則として禁止されています。

しかし、やむを得ない事由によって耕作する者がいなくなってしまっては本末転倒ですので、例外が認められています。

農地の転貸についてはこちらをご覧いただくとより理解が深まると思います。

3.賃貸借の目的物の修繕及び改良

契約期間内の費用に支出については、当事者間でトラブルになりがちな部分だと思いますので、賃貸借契約書には必ず書いておかなくてはなりません。

  1. 賃貸借の目的物の修繕及び改良についての費用の分担は、法令に特別の定めのある場合を除いて、修繕費は賃貸人の、改良費は賃借人のそれぞれの負担とするが、賃借物の返還に当たっては民法第608条の賃借人の請求により賃貸人は、賃借人の負担した費用又は有益費を償還する必要がある。
  2. 修繕改良工事により生じた施設がある場合には、その所有権が賃貸人又は賃借人のいずれにあるか、契約終了の際に貸主から一定の補償をする必要があるかどうか等について、明らかにする必要がある。

要領通知は、契約期間中の費用の取扱いについて民法の規定に従っており、貸主は貸しているものを修繕した費用を負担し、借主は修繕の域を超えてより良いものに改良した場合は、その費用を負担することを求めています。

さらに、返還時に借主が改良したものの価値がまだ残っていると考えられるときは、その分の費用を貸主は償還することを求めています。これは民法608条の規定に従ったものです。

有益費

目的物の価値を増加させるために支出した費用のこと。

4.賃貸借の目的物の経営費用

農業の経営に関する費用の支出について、要領通知は次のように指導しています。

  • 賃貸借の目的物に対する租税及び保険料は、賃貸人の負担とし、農業災害補償法に基づく共済掛金は、賃借人の負担とする。土地改良区の賦課金は、当該組合員の負担であり、原則として耕作者すなわち賃借人の負担となる。

まとめてみると以下のようになります。

経営費用 負担者
租税・保険料 貸主
共済掛金 借主
土地改良区の賦課金 借主

貸主は、農地の所有者としての義務を負担し、借主は営農に必要な運営費を負担する形になっています。

5.賃貸借契約等の終了の際の立毛補償

農地の返還する際に収穫されていない農作物があった場合、貸主がその収穫されていない農作物について補償するかどうかの規定です。

  • 契約終了の際の立毛補償については、契約書に明らかにしておく必要がある。

立毛補償

農産物がすでに作付けしてあるとき、または作付けするためにすでに費用を投下しているとき、農作物の収穫前に農地が取得又は使用されることによる損失を補償することです。

6.解除条件

農業生産法人以外の法人が農地を借入れるときには、解除条件を必ず入れておかなくてはなりません。

  • 解除条件付契約については、取得しようとする者がその取得後においてその農地等を適正に利用していない場合に契約を解除する旨の条件を契約書に記載すること。

借主が営農を放棄したり、勝手に転用してしまった場合に一方的に賃貸借契約を解除できるようにしておくものです。

個人間の契約においても、両者の合意のもと、一定の場合には一方的に解除できるようにしておくことは有効であると思います。

7.違約金等

農業生産法人以外の法人が、事業から撤退したときの違約金についての留意点は以下の通りです。

  • 解除条件付契約については、法第3条第3項の規定の適用を受けて同条第1項の許可を受けた者が撤退した場合の混乱を防止するため、農地等を明け渡す際の原状回復、原状回復がなされないときの損害賠償及び中途の契約終了時における違約金支払等について、契約書に明記することが望ましい。

経営悪化に伴う農業からの撤退や、不適切な行為によって契約を解除した場合の損害を補償するための違約金について、金額や支払期限を定めておくことでトラブルを回避することができます。

賃貸借契約書の様式例

上記の留意点を考慮して作成された様式例が、農林水産省によって公開されていますのでご紹介します。

様式例は、個人・農業生産法人用と農業生産法人以外の法人用の2種類があります。

個人、農業生産法人用

※クリックすると拡大できます。
契約書

農業生産法人以外の法人用

前述の通り、解除条件と違約金についての条項が盛り込まれています。

※クリックすると拡大できます。
契約書3

まとめ

契約とは本来、当事者の自由な意思に基づいて締結されるべきものです。これを「契約自由の原則」といいます。そして、農地に関する契約も例外ではなく、その内容は基本的には自由です。

農林水産省の要領通知は、農地行政の適切な運用を確保するために定めておくべき最低限の内容を示したものであるといえます。つまり、あくまで参考であって、かならず要領に従わなければならないというわけではありません。

しかし、農業委員会等も農水省の方針に沿った指導をすると思いますので、特に変則的な取り決めがないのであれば、要領に従った契約書を作成しておけば十分でしょう。

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