市街化調整区域においては、原則として住宅などを建築することは禁止されています。
しかし、農家の子孫や線引き前から土地を所有していた場合など、厳しい要件を満たした場合のみ例外的に住宅等と建築することが認められるとされています。
おそらく、住宅建築を検討されている方にとって、市街化調整区域で建築をするための要件を満たしているのかどうかという点は、大きな関心事ではないかと思います。
市街化調整区域についてはこちらで解説しています。
ところで、
愛知県には市街化調整区域であっても、誰でも住宅を建築することができる条例があることをご存知でしたでしょうか?
愛知県には、都市計画法34条11号「条例で指定した土地の区域内において行う開発行為」に基づき「都市計画法に基づく開発行為等の許可の基準に関する条例」が制定され、平成23年10月1日から施行されています。
開発許可の概要および開発許可基準についてはこちらをご覧ください。
この条例によって、市町村長から申出を受け、県が指定した区域内であれば、開発許可基準が緩和され、誰でも一定の要件を満たせば市街化調整区域において住宅を建築できるようになりました。
しかし、どんな住宅でも認められるわけではなく、一定の要件を満たさなければなりません。
要件① 建築物の用途
この条例によって認められる建築物の用途は、次の通りです。
- 専用住宅
- 兼用住宅
- 共同住宅
なお、区域によっては病院や社会福祉施設なども建築可能とされています。
要件② 建築物の規模
敷地面積と高さに制限があります。
- 敷地面積が200㎡以上であること
- 高さが10メートル以下であること
条例適用外の区域
愛知県より開発許可の権限を委譲されている以下の市は、この条例は適用されませんので注意が必要です。
都市区分 | 適用外市町村 |
---|---|
指定都市 | 名古屋市 |
中核市 | 一宮市、春日井市 |
事務処理市 | 瀬戸市、半田市、豊川市、刈谷市、安城市、西尾市、江南市、小牧市、稲沢市、東海市、大府市、津島市 |
愛知県条例と同様の規制緩和をしている市町村(H31年3月現在)
愛知県条例の適用外市町村の中でも独自の条例を制定して同様の規制緩和を行っている市町村もあります。
- 江南市
適用区域(平成27年5月現在)
上記の条例が適用されない市町村以外で、かつ市町村長により申出を受けて県が指定した区域は、現在のところ愛知県内では岩倉市と新城市、の一部となっています。
適用区域の詳細は以下の通りです。(※区域図はクリックすると拡大できます)
市町村 | 区域 | 区域図 |
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岩倉市 | ||
井上町、八剱町の一部 | ![]() |
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北島町の一部 | ![]() |
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野寄町の一部 | ![]() |
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川井町の一部 | ![]() |
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新城市 | 豊島字竜谷の一部 | ![]() |
奥井道、井道及び鰹渕の一部 | ![]() |
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杉山字町浦、字大東、字荒井及び字柴先の一部 | ![]() |
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富永字中ヤシキ、字沢田、字今屋敷、字梵知口、字新栄、字新知の一部 | ![]() |
赤いラインンで囲まれている区域が条例の適用区域となります。
独自の条例で規制緩和をしている市町村
前述の通り、愛知県条例の適用をうけていない市町村のうち、独自の条例を制定しているのは現在のところ江南市のみとなっています。
適用区域の詳細は以下の通りです。(※区域図はクリックすると拡大できます)
市町村 | 区域 | 区域図 |
---|---|---|
江南市 | ||
布袋駅東の区域 | ![]() | |
江南市スポーツセンター西の区域 | ![]() |
|
江南厚生病院北の区域 | ![]() |
まとめ
いかがでしょうか?おそらく多くの方が、こんな便利な条例があったなんて知らなかったのではないかと思います。
そもそも、都市計画法とは無秩序な開発を抑制するための法律です。そして、市街化区域と市街化調整区域の区域区分とは、まさにその体現的な規制であり、そこから家族要件を免除するということは、かなり踏み込んだ規制緩和ではないかと思われます。
事実、愛知県においてこの条例を取り入れているのは岩倉市と新城市(および江南市)だけです。この条例のを適用するには、まず市町村長から県への申出が必要であることから、いかに他の市町村は慎重な態度で臨んでいるか理解できるでしょう。もしかすると、岩倉市と新城市の取り組みを静観しているのかもしれません。
そう考えると、岩倉市や新城市(および江南市)において、若い世帯の増加などによって地域活性化につながるような一定の成果が出た場合、便乗する市町村が増加して一気に適用区域が広がることも期待できそうです。
適用外の市町村も例外ではなく、独自の基準を設けて運用を開始する可能性もあり、住宅の建築を検討されている方にとっては、うれしい規制緩和だと思います。
農地法は厳格化している
都市計画法の規制緩和とは対照的に、農業衰退の危機感から国を挙げて農地保護の政策が強化されており、今後も規制の厳格化が予想されます。
したがって、住宅建築の際に農地転用許可が必要な場合、都市計画法が緩和されたからといって決して楽観視はできません。
農地法の規制強化によって、マイホームの実現が難しくなることも十分にあり得ることだと思います。